メーカー技術者の頭の中

メーカー技術者mが日々考えていることを綴ります

仕事の出来不出来

メーカー研究員にとって、仕事の出来不出来を決めているものは何でしょうか?

 

一つは、研究者としての研究能力、つまり、適切な研究テーマ=科学的な課題を見つけ、それを解決するために、現状を分析し、適切な方法で解決を試みることだと思います。

 

しかし、メーカー研究員の仕事は研究だけではありません。例えば、研究テーマを元に製品を開発し、世の中に提供していくために、安全性や規制の有無を調べて必要な申請をしたり、特許などの知的財産権を獲得して競合他社のいる中でその製品を世に提供する権利を確保したり、というのも仕事の一部です。

また、管理職となれば、研究テーマを進めていく上で必要となるリソース(ヒト・モノ・カネ)の調達・管理・活用を自ら行うことになります。つまり、部下の誰に何をやってもらい研究テーマを進捗させるか、計画を立て、それに必要な費用と合わせて、調達すべく社内の適切な部署・人と交渉し、調達できたら計画を実行する(部下に指示をする)ということです。

 

そのような中で、仕事の出来不出来を決める、もう一つのものは、適切な仕事の進め方、周囲への説明の仕方、そして、それらをいかに早く体得できるかではないかと思っています。

特に、同じ組織内の研究員であっても、担当の研究テーマや部署や立場により、適切な進め方が異なるため、その研究テーマ・部署内での自身の立場に合った進め方を、上司・先輩を見て学び、自ら体得することが必要です。

仕事は人がいて進むものなので、自分のやりたいことをやるためには、関係者が納得する説明をして進めていくことがどうしても必要になります。

 

早く体得するにはどうすれば良いか、とにかく経験を積むことだと思います。

先輩・上司を見て学び、自分も真似してやってみて、上手くいったり失敗したりしながら、適切な進め方/不適切な進め方を一つ一つ理解していくことです。

ただ、どんなに頑張っても、一人で積める経験には限界があるため、日々の自身の経験に加え、他の方話を聞いたり、本を読んだりして、疑似体験として、自身の経験に反映させていくことが早く体得するためには不可欠だと思います。また、他者の話を聞くことや本を読むことには、自身の経験についての理解をより深めるというメリットもありますね。

 

体得するのにどのくらいの時間がかかるのか、研究テーマの内容や部署や人によりけりというのは勿論ですが、一つの目安は数年前後で七、八割体得できればそれで良いと思います。大体の研究テーマはそれで回るはずですし、それができたら、次の段階として、社内の異なる部署や社外の方々との話、本、仕事とは異なる場での経験を通じて、今まで自身が体得してきたものとは、全く異なる考え方・物事の進め方を知り、取り入れながら仕事を進めていくことに邁進した方が良いと思います。

研究員として、製品や技術を通じて、新しい価値を創造するという使命を達成するためには、単に仕事ができるだけでは不十分で、これまでに誰も取り入れていなかった、新しい何かを取り入れないと、意味のある成果は上がらないのではないか。

考えてみれば当たり前ではありますが、メーカー研究員八年目の私が最近感じているところです。

日本の武道や芸事で言うと、守破離の破の段階に差し掛かっている、そんなイメージです。