メーカー技術者の頭の中

メーカー技術者mが日々考えていることを綴ります

技術者が経営学を学ぶ意義その2

メーカーの技術者である私がここ2年半受講し修了した米国のMBA(オンライン)。まだ修了証書が来ていなくて、卒業式もこれからなので、あまり修了の実感がないのですが、土日に集中して課題を仕上げることもなくなり、終わったんだなぁと感じるこの頃です。

この機に、技術者が経営学を学ぶ意義について、私の思うところを書いておきたいと思います。

 

以前、同じタイトルで書いた記事(その1とします)では、技術者、特に、研究員として、MBA経営学を学ぶとどんな良いことがあるかについて、下記の3つを通じて、より研究活動を進めやすくなり、研究員自身の個性を大いに発揮して、研究成果を上げることができるようになるのではないかと、書きました。

1.研究活動を効率的に進めるヒントを得る

2.自分自身の個性に気付く

3.物事を進め決断するときの悩みが減る

 

上記は研究員を技術者(ここでは、技術に関わる仕事をする全ての方々とします)、研究活動を技術者の仕事に置き換えた場合も成り立つと考えています。

それを踏まえた上で、MBA経営学を学ぶと技術者にとってどのような良いことがあるのかを改めて考えると、特に下記の3つが大きいなと考えています。

1.全体観が養われ技術者としての仕事が円滑に進むようになる

2.仕事を通じて何を実現するのかという視点を持てるようになり、技術者としての仕事の幅が広がる

3.技術者として自分の力で自由に仕事をするための足がかりを得る

つまり、技術者としての専門性に、経営学という別の視点が加わることで、技術者としての仕事の幅・自由度を大きく広げることができる、それこそが技術者が経営学を学ぶ意義だと考えています。

 

それでは1~3の3つが具体的にどのようなことか、考えていきたいと思います。

 

1.全体観が養われ技術者としての仕事が円滑に進むようになる

技術者が仕事で求められるのは、第一に、技術の専門家として、その技術の質を高め、技術を活用していくことです。そのため、技術力を高めること、自分自身の技術者としての専門性を高めることに意識が向きます。一つの領域にフォーカスすることになる訳です。

一方、MBAで学ぶ経営学では、企業が事業を行い存続していくために、ビジョン・ミッション・バリューの下、全体的な経営の戦略を立てて、次に、経営の要となる各分野:マーケティング、財務・会計、組織・人材、オペレーションなどで何を行い、それぞれをどのように結びつけて相乗効果を生み出していくかを学びます。そのため、特定の分野というよりは、各分野を繋げて全体をどうしていくかに意識が向きます。全体を見渡すことになる訳です。

ここで、技術者の仕事はそれだけで完結するのでしょうか?少なくとも、企業の場合、技術者が技術力を高めるために必要な、物品の調達、設備や人材の確保が前の工程にあったり、その技術を世の中に提供し活用していくためのルートの整備が後の工程にあったりすると思います。つまり、技術者の仕事は、それだけでは完結せず、自身が仕事を円滑に進め、その質を高めていくためには、前の工程、後の工程との連携が必要不可欠ということです。

技術者が経営学を学ぶと、自身の仕事だけでなく、その前の工程、後の工程を含めた全工程を想像できるようになります。そのため、全体の中で自分自身が果たすべき役割が明確になるとともに、前後の工程の担当者に協力を要請する際は、相手の仕事を想像しながら、相手の立場に立って依頼できるようになり、他者と協力し合いながら仕事を進められるようになります。結果、それまでよりも、円滑に仕事を進められるようになるのではないでしょうか。

 

勿論、相手の立場に立つという意味では、他の工程の仕事、例えば、営業や人事といった技術以外の職種を経験することができるのが一番良いです。一方で、特に大企業においては、技術者という専門職として雇用されている以上、若手のうちは、一つの部署でその専門性を高めることが重視され、他の仕事を経験できないことも多いかと思います。少なくとも私はそうです。そのような場合、MBAはおすすめです。

 

2.仕事を通じて何を実現するのかという視点を持てるようになり、技術者としての仕事の幅が広がる

MBA経営学を学ぶと、自分自身が技術者として携わる仕事の全体像、つまり、技術はどのようにして生まれ、外に出て、誰の何の役に立っているのか、一連の流れが把握できるようになります。そうすると、技術を使って最終的に何をするかを自然と意識し、考えるようになります。

技術者にとっては、その技術力を高めることが責務であり、技術者自身もそれが苦にならず、技術力を高めることに目が行ってしまい、それが一番の目標となってしまうところがあると思います。

一方で、少なくとも企業の場合、技術者が技術力を高めることに専念するためには、その技術が誰かの何かの役に立ち、対価を頂き、技術力を高めるために必要なものを取り揃える必要があります。技術力を高めた結果、誰かの何かの役に立つ、ということが不可欠です。技術者自身がそれを意識しながら、技術力を高めたり、新技術を開発したりすることができれば、その技術の関わる事業の成長、ひいては、企業の成長を自らが支えていくことになります。

そうなれば、その技術者は、単なる技術の専門家というだけでなく、その企業にとって必要不可欠な存在と認められ、自身の仕事の幅が広がるのではないでしょうか。

 

3.技術者として自分の力で自由に仕事をするための足がかりを得る

MBA経営学を学ぶと、ゼロからビジネスを作ることが身近に感じられるようになります。MBAでは、新しいビジネスを提案し、起業の計画書を作るという課題も出ますので、将来、技術者としての自分の腕を頼りに、自分で会社を作り、ビジネスをしたくなったときに、どのように進めていけば良いかを想定できるようになります。

実際に起業し会社を経営していくことは非常に大変なことと思いますが、起業して自分でビジネスをすることを想定し、選択肢として持っておくことは、自分の力で自由に仕事をするための足がかりにはなるのではないでしょうか。

少なくとも、私自身は、MBAを経て、起業してビジネスをすることは決して遠くの世界の話ではなくて、その場合、何を考える必要があるのかがイメージできるようになりました。勿論、実現するためには、たくさんの努力と踏み出す勇気が必要ですが、いつか自分の力で仕事をできるように、準備していきたいなと思っています。

 

以上が私の考える、技術者が経営学を学んだ際に得られる良いことでした。

 

 

さて、MBAを修了したところで、私の肩書きとアイコンを変えました。

肩書きは、研究員から技術者に。これから、研究開発だけでなく、知財に関する専門性を高め、キャリアを構築していきたいため、研究開発・知財の両方を含むような肩書きとして、「技術者」を採用した次第です。

これからは、MBAを持つメーカー技術者として、技術のバックグラウンドに、MBAで学んだ経営学の知識を融合させて、公私ともに活動していきたいなと思っています。

よろしくお願い致します。

 

 

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