メーカー技術者の頭の中

メーカー技術者mが日々考えていることを綴ります

技術者が経営学を学ぶ意義

明日は9月1日ですね。

欧米では新学期ということで、私の所属する大学のオンラインMBAコースも、明日から新学期が始まります。また勉強と仕事を両立させねばならない期間の到来です。

 

さて、そのMBAですが、Master of Business Administration(経営学修士)という名の通り、経営学を学ぶ大学院のコースです。

私はメーカーの技術者、さらに狭めて言うなら、研究員(入社8年目の非管理職)にもかかわらず、組織を如何に運営して利益を生み出していくかが対象である経営学を何故学んでいるのか、不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

私自身にしてみれば、単純に経営学が面白いと思うためなのですが*、理系の研究員が専門の分野に加えて、経営学を学ぶことには、メリットがあると考えています。現時点で思い浮かぶのは以下の3つです。

 

1.研究活動を効率的に進めるヒントを得る

経営学は、組織を如何に効率良く運営して利益を生み出していくかが一つのテーマなので、目標に向けて何かを運営していく一連のプロセスは、研究活動の進め方を考える上で参考になります。

研究活動の進め方、つまり、何を目標として、いつ、誰が(誰と)、どこで、どのように研究活動を進めていくのかについて、包括的な視野で捉えながら、具体的な実験の計画を立てやすくなると思います。

一研究員としては、どうしても個々の実験とその結果に目が行きがちですが、そのようにして研究活動全体を俯瞰できれば、自分自身の研究活動の位置付けを理解し、本当に行うべき実験が何かを改めて考え直したり、また、研究活動の重要性をが他者に明確に伝え、他者の協力を得たり、研究費用を獲得したり、ということが行いやすくなると思います。

そして、その積み重ねが自身の研究で成果を上げることに繋がると考えています。

 

なお、上記の研究活動の進め方は、経営学風に言うと、目標と期限を決めて、それに資源(人、物、金、そして、場所)を割り当てることですが、特に、前者を如何に早く、適切に決められるかが大事だと考えています。前者が決まれば、後者は流れで自然とできるものではないでしょうか。

 

2.自分自身の個性に気付く

経営学のもう一つのテーマは、一つの会社が利益を生み出していくには、いかに、他社に対して競争優位となれるか、そのためにはどのような戦略で物を売ったり、サービスを提供したりしていくべきかです。

競争優位とは、競合他社にはない、自社の強みですが、それは自社の個性ということになります。つまり、いかに個性を際立たせていくかが勝負という訳です。

研究活動においても、研究機関であれ民間企業であれ、自分自身・自社の持つ強みを活かして、他社・他者とは異なる視点・概念で研究開発テーマを見つけ、取り組むことが新しいものを生み出すことに繋がると考えています。

 

その際、強みに気付いたら、その強みを更に強くすることに注力することが不可欠と思いますが、そのためには、同時に気付くであろう弱みは得意な人や物に頼る、外注することで、時間的な余裕を作ることが大事だと思います。

 

3.物事を進め決断するときの悩みが減る

経営学では、1,2に書いたように、

・組織の効率的な運営を通じて利益を生み出すこと

・適切な戦略で物の下で、物の販売やサービスの提供を通じて、他社に対する競争優位性を築くこと

がポイントとなりますが、これらの一連のプロセスは決断の連続です。

そのような時に、何を根拠に決断すべきか、それについて個々の企業で過去にあった事例を元に、一定の示唆を与えるのも経営学と考えています。これを知っていると、決断する際に随分と気が楽になり、悩みが減るものだと思います。

勿論、過去の事例が目の前の事例と全く同じで、決断もその事例通りに行うのが100%正しいという訳ではありませんが、少なくとも、その場合にしてはいけなさそうな決断が何か、正しそうな決断は何かについては、過去の事例を見ると感じ取れるはずです。

 

研究員が経営学を学ぶと、直接の研究分野とは違えど、より研究活動を進めやすくなり、研究員自身の個性を大いに発揮して、研究成果を上げることができるようになるのではないか、私はそう考えています。

研究員にも経営学が広まる日が来ますように。

 

 

*私の経営学との出会いは、大学生の時に、大学の講義を通じてでした。小中高生の頃、理系科目に加えて、社会・経済の科目も好きだった私にとっては、社会・経済に少し理系的な要素の加わった経営学をとても面白く感じ、その後、社会人になってからも興味を持って本を読み漁っていましたが、改めて体系的に学び、形として残しておこうと思い、MBAコースに入学しました。